みなさまご機嫌いかがですか?
最近天井の辺りに小動物の気配を感じると思ったら
ハクビシンらしくて(愚妻がベランダで目撃)
「ハクビシンなぜ逃げる」という薬剤を
購入して設置させられました。
それからベランダを眺める日々の
阿覧澄史あらんすみしでございます。
(ハクビシン見てみたい。
…それにしてもここは田舎だ)
ハクビシンを待つかたわら
今回は去年話題になった洋画を
ようやくAmazonの配信で
まとめて見てみました。
「オッペンハイマー」「関心領域」
「落下の解剖学」でございます。
(いまごろかよ)
去年話題のややこしい映画をいまごろ見た
その1
「オッペンハイマー」
2023年米 180分
監督・脚本 クリストファー・ノーラン
出演 キリアン・マーフィー
(あらすじ)
1954年。原爆開発を指揮した物理学者
オッペンハイマーがスパイ容疑をかけられ
そこで物理学者として生きてきた遍歴、
「マンハッタン計画」についての詳細を語っていくー。
すっかり話題になり、アカデミー賞もとった
大作であります。
テーマが原爆作った人の伝記でありますから
普通の「アメリカ感動伝記もの」のように
「原爆作ることになった→モンタージュ→困難に直面
→信念で克服→さらにモンタージュ→完成→どかーん
→スタッフと喜びあう。感動」
というふうに面白おかしくは作れないので
やっぱり主人公の「苦悩」を描かざるを得ず
苦労して苦悩を描いております。
「苦悩」といえばなんと言っても
キリアン・マーフィーでございまして(なんでだ?)
「ピーキーブラインダーズ」後半で見せたような
沈鬱な演技がこの映画をらしく見せ、
アカデミー賞まで導いたような気が致します。
(そして「侍タイムスリッパー」との制作費の違い
にはめまいがする…)
聴聞会からの回想によって
過去の出来事の議論をし
観客に知的好奇心を煽るという構成は
「ハンナアーレント」(2012年)を思い出します。
そして問題になった原爆シーンの有無。
ネタバレかもしれませんが、
被害の様子はありません。
ワタクシはこの映画としては正しいと思います。
それが映し出された瞬間、映画のテーマは
どっか他のところに行ってしまう気がするからで
あります。
これは「原爆を作った人」の話でありまして
「原爆反対運動」の映画ではないのですから。
色々考えさせられるとこもあり、
全体としては面白く見られた映画でございました。
追記
知ってる役者が出てるけど、ワタクシの記憶と
だいぶシェイプが違っててよくわかりませんでした。
(マット・デイモンやロバート・ダウニーJr)
フケメイクなのか、年取ったのかすらわからない…。
一番わかんなかったのはアインシュタイン役の
トム・コンティ。(メリークリスマスミスター
ロレンスであります…。)
去年話題のややこしい映画をいまごろ見た
その2
「関心領域」
2023年米・英・波(ポーランド)105分
監督・脚本 ジョナサン・グレイザー
出演 クリスチャン・フリーデル
ザンドラ・フュラー
(あらすじ)
1944年アウシュピッツ。
収容所の隣にある所長ヘスの瀟洒な屋敷。
戦時中にも関わらず豊かな生活を享受する
ヘスの家族がいた。
隣で大量虐殺が行われていることは
関心の外であった。
(これでいいのか?
他に書きようがないぞ…)
巻頭、タイトルが黒にフェイドアウトするので
ありますが、これが異常に長い…。
機械の故障を疑うくらいゆっくりフェイドアウトし
真っ黒な画面が続くのであります。
「お前いい加減にしろよ」と思う頃
ようやく画面が現れ、
のどかなピクニックの光景が
ヒキの絵(状況説明のロングショット)で続きます。
これは「フツーの映画じゃないから
覚悟しろよ」という監督からの挑戦状か?
「喧嘩売ってんのか?上等じゃねえか」と
見進めていきますと
小津安二郎の映画のようにヒキの絵に
人物が出入りし、監督は家の中で日常生活を行う
様子を丹念に拾っていきます。
その中に「フッ」と異質なものが出てくるので
ありますが、映画はリズムを崩さず
何事もないように過ぎていくのでございます。
ヒキの絵ばっかしで
奥さんの顔もよくわからないぐらい。
しかし、家の向こうにはアウシュピッツの収容所が
見え続け、不穏な音が聞こえ続ける。
それでも家の平穏さに変化がなく
しみじみと怖いのであります。
見せないもの(収容所内で起きてること)は
断固として見せないというスゴイ映画でありました。
なんせ配信では「戦争映画」ってカテゴリーなのに
戦闘シーンは一個も出てこないのでありますから。
ま、言ってしまえばそれだけの映画で
普通なら戦後処理で
ユダヤ人に無関心であった家族に「酬い」が
あったりするのでありましょうが
後半何もなく尻すぼみに終わります。
(いえ、本当はちょっとありますが…)
これは明らかに確信犯でありまして
監督が「これはふつうのドラマじゃないから
これでいいんだ」とうそぶいている姿が
目に浮かびます。
面白かったですが、週末にビール飲みながら
気楽に見るには多少重たいかも。
去年話題のややこしい映画をいまごろ見た
番外
「プロヴァンスの休日」
2014年仏 105分
監督・脚本 ローズ・ポッシュ
出演 ジャン・レノ
アンナ・ガリエナ
あまりに見るのに大変な映画ばっかりなので
我慢しきれず箸休めに見てしまいました。
あったこともない孫3人とひと夏を過ごす話
であります。
ストーリーはゆるく、敵対していた爺いと孫たちが
和解した理由もよくわかんないような話でありますが
ひと夏こんなとこで過ごせたらいいなと
ビール飲みながら見ておりました。
ショッキングブルーの「ヴィーナス」のイントロ
と共にレノの昔の仲間ジジイたちがやってくるとこが
個人的には好き。
ジジババ向け映画でありました。
去年話題のややこしい映画をいまごろ見た
その3
「落下の解剖学」
2023年仏 152分
監督・脚本 ジュスティーヌ・トリエ
脚本 アルチュール・アラリ
出演 ザンドラ・ヒュラー
スワン・アルロー
ミロ・マシャド・グラネール
(あらすじ)
フランスの山の中で暮らす作家とその夫、
視覚障害のある息子ダニエル。
ある日、夫が転落死し
事故として処理されるが
やがて妻が容疑者として検挙される。
そして取り調べによって浮かび上がる
隠された夫婦の関係。
傷つくダニエルの気持ちをよそに
妻は起訴され、裁判が始まるー。
あらら、またこの人出てきたよ。
「関心領域」の奥さん・ザンドラ・ヒュラーで
あります。
この年2023年のカンヌ映画祭では
「落下の解剖学」がパルムドール(1位)、
「関心領域」がグランプリ(2位)で
ザンドラさん独占なのでありますが
女優賞は別の人が獲っております…。
(そんなことある?ちなみに男優賞は役所広司)
なにしろあらすじでもお分かりの通り
サスペンス/スリラーな感じで始まっておりますので
そのつもりで見ておりましたが
一向に怪しいダミー犯人が出てこないし
名探偵も登場しない。
じゃあ犯人が警察から逃れていく感じの
サスペンスかと思えば、
奥さん完全に怪しいのだけれど
それを見せるそぶりもない。
これは一体どうなっておるのかと思ったら
土曜ワイド劇場でもなく
どっちかというと東海テレビ昼オビでございました。
暴かれていくのはトリックではなく
赤裸々な夫婦関係でございまして
夫婦喧嘩の描写がかなり辛い。辛い。
夫婦って、
やっぱり分かり合えないのねと
改めて思うワタクシ。
なんと
映画「ブルーバレンタイン」みたいな、
ネトフリで言うと「マリッジストーリー」
みたいな
夫婦間こじれ映画なのでありました。
(これはネタバレか?)
ちょっと欲求不満がのこる一本で
ございました…。
いやいや
3本とも
いずれ劣らぬ挑戦的な映画でございました。
今年はもう少し映画館に行きたいなと
思います。
次回はー
(まだ考えてなかった…。)
もうしばらく気ままに配信を
見たいと思う今日この頃であります。